千年の美が創る未来:西陣織が空間デザインにもたらす革新

京都・西陣で千年にわたり受け継がれてきた西陣織。伝統的な技術と美しさで知られており、その歴史は1200年にもおよびます。海外では織物=テキスタイルと呼ばれ、ディオールやシャネル、エルメス、カルティエなどのブランド店舗の内装に使われるなど、空間デザインの分野でも注目を浴びています。

西陣織の空間デザインへの革新的な活用

西陣織は、その多彩な技法と精緻なデザインで、インテリアファブリックとしての新たな展開を見せています。例えば、渡文株式会社は、帯地の製織で培った技術を活かし、タペストリーやアートパネルなどのインテリアファブリックを制作しており、「満月」や「砂紋」といった作品は、西陣織の技法である「ふくれ織」を応用することで作品としての立体感や光沢を巧みに表現しています。

また、株式会社加地織物が展開するブランド「KYOGO」は、西陣織の伝統技術と現代のデザインを融合させたインテリアファブリックを販売。フランス・パリのショールーム「ESPACE DENSAN」での展示では、壁紙やファブリックパネル、クッション、シェードなど、多様な製品が紹介され、海外からも高い評価を得ています。

アップサイクルによる新たな価値創造

西陣織の伝統的な素材や技法を活かしつつ、現代の感性を取り入れたアップサイクルの取り組みも注目されています。廃棄されたビニール傘を再利用したアップサイクルブランド「PLASTICITY」と、桐生織の森秀織物株式会社、クリエイターのEmi Arihisa氏がコラボレーションし、桐生織から着想を得たリ・デザインを活用したマルチショルダーケースが販売されています。

伝統と現代の融合が生み出す未来

西陣織は、伝統的な技術と美意識を継承しつつ、現代のデザインや技術と融合することで、新たな価値を創造しています。熱海の「桃乃八庵」は、由緒正しき別荘エリアとして知られる春日町で、長く愛され続けてきた旅館の別館だった建物。5年間放置された築85年の建物でしたが、その古民家を再生・リノベーションし、キュレーションホテルとして生まれ変わり、部屋のソファと黒いサロンチェアの張地は斉藤上太郎氏デザインの西陣織が採用され、伝統とモダンが調和した空間が生み出されています。

日本ではその継承者不足によりここ30年で日本の着物市場全体は5分の1へ、高級な「帯」が主力である西陣織の市場は10分の1へと減少しているといいます。近年では存続のために機械化に挑戦する工房も増えているといいます。伝統工芸である西陣織が持つ無限の可能性が再注目を集めることで、その価値と存続の重要性が伝わることを祈っています。

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