Trend

中国: プロジェクト特集: 天目里 杭州 (OōEli Art Park, Hangzhou)

昨年、ピューリッツァー賞受賞者である世界的建築家レンゾ・ピアノの手により中国浙江省杭州市に誕生した、約23万平方メートルにも及ぶ広大な敷地面積を誇る象徴的な総合アートパーク、天目里(OōEli Art Park)についてご紹介します。

オフィス、美術館、アートセンター、ショーフィールド、デザインホテル、アートコマースなどを包括するこの壮大なプロジェクトは、レンゾ・ピアノ、JNBY社、GOA社の3者の共同開発によるものです。とりわけGOA社はパーク全体のエグゼクティブ・デザイナーを務め、7年以上の歳月を費やして、広範囲にわたるプロジェクトを組織力と技術力で牽引してきました。

デザイン・コンセプトのポイント

天目里は、「空間」と「コミュニケーション」をキーワードに、エリア内で様々な活動が同時に行えて、また芸術鑑賞的な意味でもオアシスのようにくつろげる「都市の憩いの場」をコンセプトにつくられました。 当初、レンゾ・ピアノはこのプロジェクトを、やわらかい芯をしっかりと果肉で包んだリンゴのような一つの固体として考えていましたが、予定していた11階建てから9階建てに高さを低くしたり、7階と8階のテラスを後退させることで、隅々まで燦燦と日差しが降り注ぎ、風が吹き抜ける広場へとプランを変更しました。

動線においては、中庭を囲む4つの場所に8台の乗り換え用エレベーターを設置。利用者はまず地下駐車場から地上に出て、中庭を通ってオフィスビルに入らなければなりません。ガラスのエレベーターがゆっくりと地上に上がってくると、公園の最大の見どころである中央広場に広がる豊かな自然が迎えてくれます。また季節ごとに様々なアーティストを招いて、エレベーター内でも音楽やアートを鑑賞できるような仕掛けで、来場者を楽しませます。

ベールを脱いだグリーン・コア

天目里が誇る「グリーン・コア」。地上に広がる中庭、青々と伸びる草木、太陽光を反射させるプール、テラスに並ぶ植木鉢、屋上のティーガーデンなど、いくつもの高さの異なるグリーンを組み合わせた非常に立体的な構造になっています。植物景観エリアは、アメリカの植物生態学のエキスパートであるポール・ケップハートのデザインによるもの。この緑の景観は、地下から地上へと広がり、建物の外壁を伝って屋上へと上っていきます。また5番目のファサードとして、屋上には杭州の代表的な樹木である緑茶の木が植えられています。この茶園のために選ばれた龍井43号と安吉白茶は自然豊かな場所でも都市部でも育てられる非常に適応力の高い品種で、自然と都市の共存を表しています。

出典: 
https://www.newsbreak.com/news/2139362118784/oeli-art-park-renzo-piano-building-workshop

インテリアアーキテクト、ナターシャ・アッシャーが語るサステナビリティの秘訣

NUDE designの創設者兼ディレクターであるナターシャ・アッシャーは、アジアのホスピタリティ業界や不動産業界の大手企業のデザインを手掛けてきました。香港出身で、これまで数々の賞を受賞してきたインテリアアーキテクトのナターシャが、自身のプロジェクトにおいていかにサステナビリティを実現しているのか、その秘訣を語ってくれました。

「一から家を建てる際には、廃水の再利用、空気循環、太陽光発電装置、効率的な冷暖房システムなど、廃棄物管理のシステムづくりをお勧めします。リサイクルされた製品は、コストが高かったり選択肢が限られている場合も多いので、綿、麻、亜麻、リサイクルガラス、セラミックや粘土のタイル、本革など、二酸化炭素排出量が少なく、有害物質の発生が少ない天然素材を使うのが最適です。」

またエネルギー管理においては、家やビルの窓を二重窓や三重窓にして、温度を一定に保つことでエネルギーの無駄を省くことを提案しています。さらに、省エネ機能付きのエアコンや空気循環用のシーリングファンの設置や、オイルラジエーターで室内を暖めるなど、シンプルで実現しやすい方法はいくつもあります。

照明は発熱量が少なく寿命の長いLED電球を使用します。しかし、電球自体はリサイクルできますが、LED内蔵型の照明器具は電球が切れても交換ができず廃棄することになってしまうので注意が必要です。

サステナビリティを実現する上で、廃棄物管理は非常に重要なポイントなので、どのプロジェクトにおいてもまず廃棄物削減プランを考えて、それをベースに全体を設計するそうです。例えば天然石や決まったサイズに加工された天然素材を使用する場合には、サイズやパターンの比率を緻密に計算して、最も効率的に無駄を出さないようにするといったように。

場合によってはヴィンテージの家具を再利用したり、クライアントにとって歴史的価値や思い入れの深いアンティーク家具を使用するのも好きだと言うナターシャ。専門的な視点だけでなく個人的な嗜好を取り入れることも時に必要だと考えています。一方でさほど大掛かりではない改修工事の際には、作り付けの照明器具で破損もなく特別な仕様のものでなければ、そのまま使用して廃棄物や不要なコストを抑えるケースもあります。

環境を守ることとサステナビリティを何より重要だと考えるナターシャは、食材選びから洋服、一般消費財など身の回りのあらゆることにおいてその姿勢を貫いています。「これはもはや個人レベルの問題ではなく、サステナビリティと環境保全を推し進めるためには、政府が旗を振らなければなりません。私たちはコロナによって、コミュニティが世界に与える影響の大きさを思い知らされました。環境問題は、決して他人事ではありません。本当に悲惨な未来が現実のものにならないように、今こそ真剣に取り組みましょう。」と、力強く締めくくりました。

Photo Credits: Lusher Photography

Scroll to Top