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進化する木造建築:環境負荷ゼロを目指した未来のかたち

木造建築は、環境負荷の低減や持続可能性、そしてデザインの革新性から、世界的に再注目されています。本記事では、木造建築の魅力と機能性、そして日本における将来性について、国内外の具体的な事例を交えてご紹介します。

環境負荷の低減と持続可能性

木材は再生可能な資源であり、成長過程で二酸化炭素を吸収・固定します。鉄やコンクリートと比較して、製造時のエネルギー消費が少なく、建築物のライフサイクル全体での環境負荷を大幅に削減できます。また、木材は炭素を固定し続けるため、地球温暖化対策にも貢献すると注目を浴びています。

技術革新とデザインの可能性

近年、木造建築技術の進化により、高層建築や複雑なデザインも実現可能となりました。特に、*1CLT(直交集成板)や*2プレファブリケーション技術、木材と他の材料を組み合わせたハイブリッド構造などが、木造建築の可能性をさらに広げています。木材は視覚的な温かみだけでなく、調湿性や断熱性にも優れています。そのため、木造建築は快適で健康的な居住空間を提供し、リラックス効果やストレス軽減が期待されています。

*1CLT(直交集成板): ひき板を繊維方向が直交するよう に積層接着したパネル
*2プレファブリケーション技術:工場等であらかじめ部材の加工、組み立てを実施しておくこと

海外における木造建築の事例

海外でも、木造建築の革新的なプロジェクトが進行中です。オーストラリア・シドニーでは、世界最高となる高さ182メートルの木造ハイブリッド構造ビル「Atlassian Central」が建設中です。このビルは、木材と鉄骨を組み合わせた構造で、環境負荷の低減とデザイン性を両立しています。また、ドイツのウーアバッハでは、自己成形する木材を用いた「ウーアバッハ・タワー」が建設され、木材の乾燥収縮を利用した革新的なデザインが注目を集めています。

日本における木造建築の将来性

日本は世界有数の森林国であり、古くから木造建築の技術を受け継いできました。近年では、CLTをはじめとする新しい木質材料の利用や、伝統的な木組み技術と現代技術の融合が進んでいます。また、法規制の緩和や技術開発、地域活性化など、木造建築の可能性を広げる取り組みが進行中です。

具体的な事例

HULIC &New GINZA 8(東京都):銀座中央通りに位置する地上12階、地下1階の商業施設で、日本初の12層木造架構を実現しています。燃エンウッドの柱・梁やCLTを用いた制振壁など、最新の木造技術が採用されています。
takenaka.co.jp

Port Plus(東京都):地上11階建ての純木造耐火建築物で、壁や床、屋根の構造体にCLTを使用し、内装の天井や階段、家具等にもCLTを活用しています。自社の宿泊機能付き研修施設として、木造建築の新たな可能性を示しています。
clta.jp

いま再注目されている木造建築。環境への配慮、デザイン性、そして技術革新の可能性を改めて示し始めています。日本における木造建築の未来は、これらの取り組みにより、さらに明るく、持続可能な社会の実現に向けて大きな役割を果たすかもしれません。

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メタバースの可能性とは?デジタルと現実が融合する未来

近年、急速に進化するデジタル技術により、メタバース(仮想空間)が私たちの社会において重要な役割を果たし始めています。メタバースは単なるゲームの世界ではなく、ビジネス、教育、観光、地域活性化など、多様な分野での活用が期待されています。また、地方創生の新たな手段としての可能性にも注目が集まっています。

そもそもメタバースとは何か?

メタバースとは、インターネット上に構築された仮想空間のことを指します。利用者はアバター(デジタル上の自分)を通じて、この空間内を自由に移動し、単なるコミュニケーションツールに留まらず、経済活動なども行うことのできる社会的コミュニティ、一部の人々にとっては生活インフラになるまでその市場は拡大しています。また、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)技術の進化は、メタバース体験をよりリアルに、そして没入感のあるものへと進化させています。現実世界とデジタル世界が融合することで、これまでにない新たな体験やビジネスチャンスが生まれています。

その中で代表的な例の1つがNFT(非代替性トークン)の活用です。NFTとは偽造できない鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータを活用し、デジタル上の土地やアイテムを売買することでデジタル資産の所有なども可能となっており、新たな売買市場やビジネスを創出する技術として注目が集まっています。

GARDEのメタバース事業部は2023年に青山デザインフォーラムが運営するメタバース空間「COCO WARP」の空間デザインと製作・販売サービスの提供を開始し、アバターによるカンファレンス参加やアート鑑賞、購入などが可能となっています。

メタバースがもたらすビジネスチャンス

メタバースの登場により、企業のビジネスモデルにも徐々に変革が求められています。マーケティング手法やリモートワークの普及によるバーチャルオフィスとしての空間活用、そのほか、教育・研修の点においてもメタバースを活用した没入型の学習体験が実現可能なため、医療分野では手術のシミュレーション、製造業では工場のオペレーション訓練などが期待されています。

また、メタバースによるビジネスチャンスは、地方創生と観光業の活性化の点においても注目されています。地方自治体がメタバースを活用することで、地域資源をデジタル化し、世界中の人々に発信することが可能となります。例えば、歴史的建造物や観光名所をVR化し、遠隔地からでも訪問体験ができるようになるほか、地方の特産品をメタバース内で販売することで、地域経済の活性化にもつながることが期待できます。

地方創生メタバースアワードへの参加を考える

GARDEでは40周年の節目に初の「地方創生メタバースアワード」を2024年11月より開催しています。地方自治体からの需要とクリエイターの力をかけ合わせ、メタバース技術を通じて地域の魅力を広く発信し、地方経済や文化の発展をサポートすることを目的としながら、地方活性化に貢献するアワード応募者の取り組みを表彰するアワードとなります。

単なる流行ではなく、社会のあり方を根本から変える可能性を秘めています。地方創生においては、新しい価値を創出し、地域の活性化につなげる大きなチャンスとなるはずです。

2025年4月30日の締め切りが迫る中、企業や自治体の皆さまにおかれましては、ぜひこの機会にメタバースの活用を検討し、「地方創生メタバースアワード」にご注目、応募をご検討ください。

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GARDEのサステナビリティ施策を紹介 デザイン業界に求められるサステナビリティとは

地球環境の深刻化や社会意識の変化、ESG投資への関心の高まりなどにより、近年注目度を増すサステナビリティ。社会全体、またデザイン業界に求められる課題解決に向けた取り組みの検討、実施をGARDEでも積極的に行っています。

今回の記事ではGARDEのサステナビリティ施策と実績について紹介します。

サステナビリティとは

サステナビリティとは、環境や経済などに配慮した活動を行うことで、社会全体を長期的に持続させる狙いがあります。
企業におけるサステナビリティには、環境、社会、経済の3つの観点から持続可能な社会を目指す経営が求められています。

建築・デザイン業界のサステナビリティ

建築・デザイン業界がコミットできるサステナビリティ施策には、環境面・経済面の要素が大きいと考えられています。例えば、建築物の建設や運営、維持に関わるCO2排出量の削減や、再生エネルギーの活用、資源の有効活用、より自然に配慮したサステナブル建築の設計などが挙げられます。

上記の業界施策に加え、当社では業界内外に関するサステナビリティトレンドを継続的に調査することで、クライアントに合わせた最適な取り組みのご提案を目指しています。
サステナビリティトレンドに関する記事は以下よりご覧いただけます。
>商空間デザインの最前線を探る
>優れた汎用性を持つ「竹」の用途
>日本のサステナブルファッション

GARDEのサステナビリティ施策

デザイン事業
GARDEのメイン事業の一つであるデザイン事業では、建築デザインからインテリアデザイン、環境デザインまで幅広い分野においてデザインと機能が結びつく空間を創造しています。

近年クライアントから求められるデザインは機能性だけなく、サステナビリティも欠かせない要素です。
当社では、空間を構成するマテリアルや空間を彩る家具の選定においてもサステナブルな構成を意識し行っています。
また、より長くご利用いただくために、配置や動線を熟考することで持続可能な設計をデザインに反映させています。

メタバースの可能性
2023年より新事業としてスタートしたメタバース空間のデザインと製作及び販売サービス。
当社が提供するデザイン事業を拡張し、お客様にさらなる付加価値を提供することが目的ですが、このメタバース事業にもサステナビリティを意識した要素があります。
店舗やイベント会場、ショールームなどの空間を建設するには土地や資材の確保が不可欠です。しかしメタバース上で空間を構築するとこれらの削減を可能とし、地球環境への配慮にも十分に期待できます。

その他、社会開発の観点から、観光で地域を活性化させる地方創生事業の運営や遊休不動産の活用にも積極的に取り組んでいます。
事業紹介はこちら

EcoVadisへの参加

EcoVadis は、1)環境、2)労働と人権、3)倫理、4)持続可能な調達に対する企業の行動と今後の取組みを「プラチナ」、「ゴールド」、「シルバー」、「ブロンズ」、「評価なし」の 5 段階によって評価する世界的な認定制度です。

GARDEは2024年からこの制度へ参加し、世界 13 万社の評価対象企業の中で上位 15%に付与されるシルバーメダルを獲得しています。
EcoVadisに参加することで自社の強みや改善点の把握ができ、持続可能な社会の実現に向け、取り組みの強化と継続が可能となりました。

さいごに

GARDEのサステナビリティ施策についてご紹介しました。
各取り組みを通じ、「環境保護」「社会開発」「経済発展」への更なる貢献を目指します。

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外資系ホテルの日本市場参入・拡大が加速 高級ブランドの進出がもたらす影響とは

近年、日本市場における外資系ホテルの進出が加速しています。マリオット・インターナショナル、ヒルトン・ワールドワイド、IHGホテルズ&リゾーツ、アコーホテルズといった世界的なラグジュアリー、ハイエンドホテルチェーンが、日本各地で新たな宿泊施設を続々と開業しています。その背景には、政府の規制緩和や訪日外国人旅行者の増加によって、日本の観光市場が更なるマーケットの成長が見込めるエリアとして、外資系企業に再注目されている点にあります。

東京・京都を中心に進む高級ホテルの新規開業

2023年4月には東京・丸の内エリアにイタリアの高級ブランド「ブルガリ」が国内初進出となる「ブルガリ ホテル 東京」をオープン。このホテルは、スタンダードルームが1泊平均20万を超えるラグジュアリーホテルであり、中には1泊400万円を超えるスイートルームも提供しており、超富裕層向けの宿泊施設として注目を集めています。

また、訪日外国人の観光名所の一つである京都においても外資系高級ホテルの進出が相次いでいます。2024年以降、「シックスセンシズ京都」や「バンヤンツリー・東山 京都」などが開業し、京都ならではの伝統的な日本文化と調和した空間デザインが国内外の富裕層から人気となっています。

GARDEでもこれまで数多くのホテルブランドの空間デザインを担当していますが、以前のDESIGN MAGAZINEでご紹介した「ハイアット ハウス 東京 渋谷」や「カンデオホテルズ京都烏丸六角」などでも外国人観光客の宿泊が多くみられ、市場として急成長していることを感じています。

外資系ホテル進出の背景 ― 円安と観光需要の高まり

外資系ホテルによる日本市場への積極進出の背景には、日々ニュースで取り上げられている通り、コロナ禍からの観光需要の回復と円安の影響が大きく関わっていることは言うまでもありません。2023年、 の発表によると、訪日外国人旅行者数はコロナ前の水準を回復し、過去最多を記録。それを受けて政府は2030年までに訪日外国人旅行者数を6000万人に増やし、消費額を15兆円にするという目標を掲げました。その一環として富裕層向けの宿泊施設の拡充を進めており、間取りの広い客室を設ける場合はビルの容積率を緩和するなど、ホテルの客室設計における規制緩和を実施していることも、外資系ホテルブランドが日本に参入しやすい理由の一つといえるでしょう。

建築デザインとテクノロジーの融合

外資系ホテルは、日本市場において単なる宿泊施設としての役割を超え、建築デザインや内装に地域文化を取り入れることで、独自のブランディングを展開しています。

例えば、ザ・リッツ・カールトン京都では、日本庭園や和紙を取り入れたデザインが特徴的で、畳や障子、木材といった伝統的な素材を活用し、京都の文化的要素を反映した空間を演出しています。また、東京・大手町のアマン東京では、モダンな高層建築に石材や木材、和紙を融合させ、洗練された和の美意識を表現しています。

さらに最近は、音声コントロールやAIアシスタントを活用した客室管理システムを搭載するなど、最新のIoT技術やスマートルームを導入することで、宿泊客にシームレスな滞在体験の価値を高めるためのDX化を進めるラグジュアリー、ハイエンドホテルブランドも増加傾向にあります。伝統と最新テクノロジーの融合が、外資系ホテルの強みになりつつあります。

さいごに

外資系ホテルの日本市場への進出は今後も続き、高級ホテルブランドの競争が激化する中、各社は地域の文化を尊重したデザインや独自のサービスを提供することで、他社との差別化を図っています。また、持続可能な観光の観点から、環境に配慮した建築や省エネルギー技術の導入が求められており、業界全体としてサステナビリティを重視した運営が期待されてきています。

観光需要の増加と政府の政策支援を背景に、外資系ホテルだけでなく今後も新たなブランドが日本市場に参入し、業界のさらなる発展を期待しています。

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伝統と革新を織りなす輪島塗の未来‐震災からの復興と新たな挑戦

石川県輪島市で生まれた伝統工芸「輪島塗」。会津塗(福島)、紀州塗(和歌山)にならぶ日本漆器の一つとして、海外からも高い評価を受けている伝統工芸品です。輪島塗は「堅牢優美」と評されていますが、その理由は、輪島市でしか採れない良質な土が漆器や耐熱性を強固にする特性を持ち合わせており、100以上の製造工程を専門職人の手を経てひとつひとつの漆器を仕上げていることが、美しい仕上がりの実現に繋がっています。

能登地域では、お祭りの日や大勢の親戚などを家に招く日に使う器として使用されており、その耐久性の高さから親から子世代、孫世代へ受け継がれていく特別な品となっています。

現代のインテリア・アート業界における輪島塗

近年、輪島塗は現代のライフスタイルにも適合するアート作品としても注目が集まり、生活スタイルの変化に合わせた、モダンなデザインの製品も製作されています。
ほか、英国王室御用達のブランド食器と輪島塗がコラボレーションをするなど、伝統的な奥ゆかしい工芸品としてのみでない新しい挑戦が続けられています。

能登半島震災を受けて

昨年に発生した能登半島地震は、石川県輪島市にも甚大な被害をもたらしました。輪島塗も例外ではなく、多くの工房が損壊し、職人たちの生活と製作活動が一時的な停止を余儀なくされました。伝統工芸品の職人離れが全国的に加速する中で、震災を受けて廃業や職人が地域を離れていく厳しい現状がありました。そんな中、地域の復興と伝統を守りたいと願う地元自治体や支援団体をはじめとする全国からのサポートがあり、被災した3か月後には仮設工房の設置がなされるなど、職人たちが制作活動を再開できるような環境が整いはじめたといいます。

また、震災を受けてやむを得ず手放すこととなってしまった輪島塗の漆器を、とあるボランティア団体では譲り受けて復興のためのチャリティー販売を実施し、収益金を能登との復興のために還元していく取り組みなども実施されました。

復興を願って

能登半島の震災から1年。まだまだ、復興への険しい道のりが続く中で、地域を守ろうとする能登の絆の強さを再確認させてもらいました。
GARDEの創業40周年記念贈答品では地域創生・復興の支援の1つとして持ち手に輪島塗を使用したワインストッパーを採用いたしました。
この先も輪島塗の美しさと伝統を未来に受け継がれていくことを願い、伝統文化継承の重要な産業を担っている作り手の皆さまを応援しています。

田谷漆器店さんからのコメント

輪島塗は、国の重要無形文化財に指定されており、その製造工程や素材はしっかりと定められています。細分化された工程を、それぞれのプロが作り上げる事で、クオリティーの高い漆器ができるという考えの元、職人が力を合わせて一つの製品を作り上げています。天然漆の触り心地の良さ、見た目の美しさ、世界中のどんな塗料よりも優れていると思っています。お手に取る皆様に、漆芸の魅力を感じて頂けますと幸いです。

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