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GARDEがデザインした「カンデオホテル京都烏丸六角」、「寧波阪急」、「北京西単Joycity2F宝飾テーマゾーン」が「MUSE DESIGN AWARDS 2022」を受賞しました!

「MUSE DESIGN AWARDS」はクリエイティブとデザインのプロフェッショナルを顕彰するためにニューヨークで創設された世界でも知名度、認知度が高く広く世界に開かれたコンペティションです。

プロフェッショナルが同業他社と競い合う場を提供することで、様々なクリエイティブおよびデザイン業界における卓越性を促進することを目的とするInternational Awards Associate(IAA)によって主催されています。

IAAは、業界のプロフェッショナルで構成される審査委員会を設置することで、公平性を保ち、業界標準に基づいた評価基準を設けています。審査員の使命は、各業界の新たなベンチマークとなるような優れた才能を持つ企業や個人を探し出すことです。

 

2022年は世界中から6,000を超える応募があり、その中からGARDEがデザインをした「カンデオホテルズ京都烏丸六角」「寧波阪急」GOLD「北京西単Joycity2F宝飾テーマゾーン」SILVERを受賞しました。

 

■各物件の特徴・・・

京都市登録有形文化財である貴重な町家「旧伴家(ばんけ)住宅」を保存・修復した「カンデオホテルズ京都烏丸六角」は単に古いものを新しく、綺麗に、使いやすくするのではなく高度な次元で「完成されたデザイン」(最適解)をさらに「最適化」しました。

 

寧波阪急」は、人々が集い、心地よく過ごせるオアシスのような場所であることと、ジャパンコンテンツの発信することを柱に単に日本の伝統的文化をそのまま表現するのではなく、モダンに昇華したデザインとして取り入れました。

 

西単Joycity2F宝飾テーマゾーン」は従来のジュエリーショップのような高級感を強調した重厚感のあるクラシカルな空間ではなく、気軽に立ち寄れるカフェスペースを併設したBrandMixの空間をデザインしました。

 

「MUSE DESIGN AWARDS2022」の受賞は、我々GARDEの創意工夫やブレがなく徹底したデザイン創作への姿勢が、世界で認められた証だと考えております。

 

GARDEでは、物件デザインが完成した後も、その空間やデザインの素晴らしさを広めることを目的に、毎年国内外のアワードへのエントリーを数多く行っております。

 

・MUSE DESIGN AWARD公式サイト: https://design.museaward.com/

 

GARDEがデザインした「VMware Japanオフィス」が「iF DESIGN AWARD2022」を受賞しました!!

ドイツを拠点とする International Forum Design(工業デザイン協会)主催で1953年に設立され、デザインアワードとして世界的にも知名度が高いiF DESIGN AWARD。2022年は60ヶ国以上から10,000を超える応募が集まり、また20カ国以上から集まった132人の著名なデザイン専門家たちによってデザイン界の次の新星を発見すべく、〝IDEA″〝FORM″〝FUNCTION″〝DIFFERENTIATION″〝IMPACT″を審査基準に優れたデザインが選ばれました。

 

そんな「iF DESIGN AWARD2022」においてGARDEがデザインした「VMware Japan 」リニューアルオフィスがアワードを受賞しました。

空間デザインのコンセプトはシンプルで控えめ、クラシックでありながら、内側に豊かさや表現力、色彩を秘めた日本独自のデザイン文化である「浦勝り」からインスピレーションを受けています。来館者エリアは繊細で調和的、スタッフエリアはカラフルで表情豊かにすることでコンセプトを表現しています。

柔軟性とコラボレーションに焦点を当てることで、新しい働き方を刺激し、促進する役割につなげることに成功しました。

 

GARDEでは、物件デザインが完成した後も、その空間やデザインの素晴らしさを広めることを目的に、毎年国内外のアワードへのエントリーを数多く行っております。

 

・iF  DESIGN AWARD公式サイトhttps://ifdesign.com/en/winner-ranking/project/vmware-japan-office/348555

 

International Design Awards2021でGARDEがデザインした4物件が入賞しました!!

International Design Awards/IDAは世界各国の建築、インテリア、プロダクト、グラフィック、ファッションデザインにおいて卓越したデザインの創造者を発掘、表彰し活動を後押しすることを目的に2007年に設立されたデザインアワードです。

各業界において、15年以上の経験を持つ専門家が審査員となり、また、公平で公正な判断を行うためエントリー作品の審査はランダムで且つ匿名で行われます。

単に美しさや芸術的価値を競うアワードではなく、イノベーション(市場に向けた新たな創造の提供、もしくは既存製品やサービスの補完、改善)、機能性(使いやすさ、安全性、メンテナンスの容易さ)、人間工学(ユーザーファーストに基づいているか)、耐久性(品質と寿命)、社会への影響力(デザインによる社会的メリット)、ユーティリティ(ユーザーの目的とニーズを満たしているか)、生態学的適合性(潜在的環境及び生態学的影響が図れているか)、生産の実現可能性(生産及び大規模な使用を図ることへの技術的、経済的現実性)、感情指数/EQ(実用的目的達成及びデザイン的楽しさ、満足感)など、審査基準は幅広くまた、厳しいと言われています。

そんなIDA において2021年は「THE ME」「Gurney Food Hall」「VMware」「KL EAST MALL」の4物件がHonorable Mentionを受賞。独創性と特別感を備えた素晴らしいデザインだと認められました。

GARDEでは、物件デザインが完成した後も、その空間やデザインの素晴らしさを広めることを目的に、毎年国内外のアワードへのエントリーを数多く行っております。

 

・International Design Awards公式サイトhttps://www.idesignawards.com/

世界のリデザイン建築

2021年12月にベトナム国立ダナン大学(The  University of Da Nang)建築学部とGARDE共催で「伝統と未来/TRADITIONAL&FUTURE」と題した共催WEBセミナーを開催しました。セミナーでは日本とベトナムの伝統建築におけるリデザインやリブランディングの実績、事例をはじめポストコロナ後の建築やデザインのあり方などについて熱いプレゼンテーションが交わされました。

皆さんは「伝統と未来」と聞くと何が思い浮かびますか?文化やデザイン、形など目に見えるものが多いのではないでしょうか。もちろん、それらは伝統、未来と切っても切れない関係です。ですが、建築はじめモノ創りにおけるそれにはその時代の空気や匂い、技術、創り手の思い、希望、努力、葛藤…など様々な要素が含まれています。

また、最近では“サステナブル”や“SDGs”“環境問題”といった社会課題への配慮を盛り込み思考することも増えており、建築においては設計・施工・運用の各段階を通じた建築設計時における環境面、汎用性、持続可能性の配慮が重要視されています。

これは、これからの時代イノベーション(変革)を興しさえすれば良い、顧客を開拓しさえすれば良いという近代化が推し進めてきた「合理主義」や「ヒューマニズム」「進歩主義」「利便性」の追求が通用しなくなりつつあること、それ以前にそれが“社会の持続可能な発展のためにどの様に作用するのか”、“社会的課題をどの様な手法で解決に導くことができるのか”といったコンセプトや仕組みがモノ創りの柱になることを意味しているのではないでしょうか。

この社会課題への取り組みですが、何も今に始まったことではありません。今から遡ること200年以上前の建築にもサステナブルに通じる「環境建築」が採用されています。

そこで今回は、壮大な歴史ストーリー、過去へのオマージュが伝わる「リデザイン建築」をご紹介します。

■カンデオホテルズ京都烏丸六角(日本・京都)

2021年6月にオープンした「カンデオホテルズ京都烏丸六角」は京都市登録有形文化財である伝統的な町屋「旧伴家(ばんけ)住宅」をホテルとしてリデザイン。町家の中でも「旧伴家住宅」は、当時の趣を残す貴重な建物で、特に主室と次の間から成る座敷はともに面皮柱(めんかわばしら)を建て、面皮長押(めんかわなげし)をまわすなど数寄屋風に仕上げられており、また主室は床・棚・平書院を構え、棚の天袋・地袋の奥には池大雅(いけのたいが)の墨絵が張られているなど細部に渡り手を抜かず意匠としても優れています。その趣や魅力を最大限に生かすため、応接の間、ラウンジ、BARの畳空間はそのままに、元々あった中庭は保存し、1Fの応接の間から京町家の空間をくつろぎながら楽しめるよう細部に渡り工夫が施されています。

建物はレセプション棟、客室棟、大浴場棟の3つの棟で構成。特にレセプション棟にある応接の間、バー・ラウンジなどは基本的に畳空間を踏襲。応接の間には、京都出身の文人画家である池大雅(いけのたいが)の墨絵が描かれた襖に、和を連想させる白檀が香る玄関などでくつろぎの空間を創出。またバー空間には、格子窓から見える通り土間に配された吊り下げ照明が、お祭りで掲げられる提灯を眺めるような雰囲気を醸し出し、町屋に住む感覚を演出しています。

京都が一年で最も賑わう祇園祭の際には、ホテル正面に山鉾(浄妙山)が組み立てられるなど、身近に京都の歴史や空気を感じることができる貴重な体験型リデザイン建築です。

■旧桜宮公会堂(日本・大阪)

「旧桜宮公会堂」は、1935年に「明治天皇記念館」として建設され、戦後、1948年「桜宮公会堂」となりました。 竜山石(たつやまいし)造りの正面玄関は、1871年にイギリスの建築家、土木技師のトーマス・ウォートルス(Thomas James Waters)により建設された造幣寮(現、造幣局)の玄関を移築したもので、現存する近代建築としては日本で最も古い物の一つで国の重要文化財に指定されています。日本で最初期の本格的な西洋式の大工場群、鋳造場(ちゅうぞうじょ)のファサードでした。

因みにこのトーマス・ウォートルスですが大阪造幣寮の建築群をはじめ砂糖、紡績、洋紙などの各種洋式工場、竹橋陣営時計塔(たけばしじんえいとけいとう)、イギリス公使館の建設に従事、更には日本最初の煉瓦造りによる商店街として銀座赤れんが街を計画(赤れんが街に使う煉瓦製造のため日本初のホフマン式輪窯(わがま)が小菅(こすげ)村(現、東京都葛飾区小菅)に建設される)など幕末から明治初期の日本に最初に洋風建築を持ち込んだ重要な人物の一人です。

「桜宮公会堂」となって以降、図書館やユースアートギャラリーなど様々な用途を経て、2007(平成19)年に閉鎖されることとなります。重要文化財でありながら用途もなく放置され、古くなっていくだけの建築を救うため大阪市と民間企業により歴史的財産を有効活用プロジェクトが立ち上がることとなりました。

「歴史を感じさせる重厚感と様式美を生かしつつ、非常に現代的なデザイン感覚を取り入れた“新旧の融合”」というコンセプトのもと過去の改修工事によって覆い隠されていた装飾天井やステージ、大きなアーチ窓も78年前の竣工当時のものを復元するなどクラシック感と、新たに取り入れられた調度やデザインとのバランスを図りながら、「旧桜宮公会堂」として復活を遂げました。現在は、結婚式場というメモリアルな空間として多くの人の幸せなストーリーを作り続けています。

■ソルジャー・フィールド(アメリカ・シカゴ)

第一次世界大戦後、戦争で命を落とした人たちを偲ぶため慰霊碑や建築物が数多く建てられました。シカゴ市にあるグリーク・リバイバルのソルジャー・フィールド(1924年)もその一つです。1919年にホラバード・アンド・ロッシュが設計したこちらの建物は巨大なドーリア式のアーケードが特徴。1926年11月27日に開催された第29回アーミー・ネイビー・ゲームで正式オープンした後は1971年よりフットボールチームの「シカゴ・ベアーズ」の本拠地となりました。

2003年、シカゴを拠点とするローハン・キャプライル・ゲッシュ・アソシエイツと共同でウッド・アンド・ザパタによる改修が行われるも、実はこの改修については、今日に至るまで議論の的となっています。ついに2006年に国定歴史建造物の指定からも外されてしまいます。(ここでは、保護主義者とスポーツファン各々の考えがあるため…としておきます。)

さて、その改修内容ですが鉄筋コンクリートのシェルは残され内部には非対称の曲線を持つ鋼鉄とガラスによる設備が新たに作られた。また、西側には屋根のない座席、東側には屋内に豪華なボックス席が設けられるなど、旧式で狭苦しかった部分は取り壊すことで全体としての収容人数は減ったものの、観客席とフィールドの距離は近くなりライブ感のある空間へと生まれ変わらせることに成功しました。「レイクショアの見苦しきもの」や「アクロポリスの大惨事」などと批判的な意見もあるようですが、宇宙を感じさせる設計やデザインを擁護し高く評価する声も多くあります。その理由としては、設備が大幅に改修、更新されたことで、集客が増えチーム収入が増大、その結果シカゴ市への多大なる経済効果を生んでいるということが言えるでしょう。

由緒ある施設をファンと保護主義者両方を満足させ改修することの難しさは基より、このプロジェクトに携わった方々の努力や苦難が伝わってくるような素晴らしい建築物です。

◆出典元
https://www.candeohotels.com/ja/kyoto-rokkaku/
https://restaurant.novarese.jp/smk/
http://www.kenzai.or.jp/tanbou/240.html
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784808710828

遊休資産利活用とSDGs

10月から12月の2ヵ月間、4回に渡り『遊休資産 廃校跡地の有効利活用』無料WEBセミナーを開催しました。近年、少子化による児童生徒数の減少や市町村合併などの影響により、公立学校が毎年500校程度廃校となっていることは皆さまも既にご存じかと思います。

本来ならば、地域にとって貴重な財産でありまた、地域の象徴的な存在でもあるはずの『学校』が、地域内で再活用のニーズが見出せず遊休化してしまうということは、地域にとって大きな損失であり、地域の安全や環境面においてもマイナスになっています。その様な背景からも廃校となった校舎の新たな利活用を見出すことは官民連携一体となり取り組むべきプロジェクトの一つとなっています。ここで重要なポイントとなるのは「SDGs」の促進も踏まえた上でのアプローチや戦略立案となっているかということです。人類と未来にとって極めて重要なアクションとして2015年9月にニューヨークの国連本部で開催された国連総会で採択されたこの「SDGs」ですが、今やあらゆる価値創造におけるベースと言えます。

そこで今回は、世界のSDGs戦略事例を通し、遊休資産利活用のキーワードを探りたいと思います。

■SDGsとは

2015年9月「私たちの世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ/Transforming Our World: The 2030 Agenda for Sustainable Development」と名付けられた文章が国連総会で採択された。これはSDGs(Sustainable Development Goals)の名称で使われている持続可能な開発目標が記された文章です。“誰一人取り残さない/leave no one behind”を理念に2030年に向けた17のゴールと169のターゲットが設定されています。文章の冒頭には“人間・地球・繁栄・平和・パートナーシップ”全ての側面が絡み合うことで2030年以降の未来が見えてくることを謳った5つのキーワードが掲げられています。

◆5つのキーワード➡ https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/preamble/

◆17のゴールはこちら➡ https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/17goals/

■遊休資産の観点からSDGsを考える

#1.地方創生×SDGs 

SDGsのゴールである持続的に発展する世界、社会、地域コミュニティを考えるにあたり日本の地域社会、とりわけ地方の農村・中山間地域において急激な過疎化が懸念されています。地域の産業衰退や生活環境の悪化は、人口減少を加速化させ、最終的には地域コミュニティの衰退や集落消滅の危機を招くことにもつながります。地方自治体が行ってきた、人口増加を前提としたこれまでのような住民サービスの提供は、もはや困難となりつつあることが明確となった今、限られた人的・物的資源を最適な形で活用し、地域社会の維持と持続可能なコミュニティづくりに向けた新たなモデルを確立することが求められています。

2014年5月、「日本創成会議」(増田寛也座長)は、全国1800自治体のうち半数以上(896)が2040年には「消滅」する可能性があるとのレポートを発表、大きな衝撃を与えました。これを受け政府は、同年9月に「まち・ひと・しごと創生本部」を設置、地方創生への取組を本格的化させました。以降、地方創生においてSDGsを積極的に活用する方針が多く打ち出されています。

#2.社会・経済・環境×SDGs

SDGsは、「経済」「社会」「環境」を不可分のものとして捉え、それぞれが抱える課題をインプットとし、課題を解決しながら新たな価値をアウトプットしていくことです。ここで弊社の様な業態、業種が最も得意とする「デザイン思考/Design Thinking」の考え方が生きてくると考えています。これは、デザインの制作過程だけで活用されているわけではなくAppleやGoogle、P&Gなどのグローバル企業では、早くから経営や事業を展開していく上で積極的に取り入れており、日本企業でも近年、市場構造の変化を背景に一段と関心が高まっている思考法です。大きくは5つのプロセスで構成されます。

  • 観察・共感(Empathize)
  • 定義(Define)
  • 概念化(Ideate)
  • 試作(Prototype)
  • テスト(Test)

我々の様な企業や団体など、いわゆるステークホルダーが地域住民や自治体などから課題を吸い上げ、課題やニーズを定義しアイデアを出す、そのアイデアを元にプロトタイプを作成、実際に顧客やユーザーにテストを行いながら試行錯誤を繰り返すことで新たな製品やサービスを生み出し、課題解決につなげるというプロセスです。デザイン思考とは、単に表面化した問題や課題を解くのではなく、製品やサービスを使うユーザーの立場に立ち考え、根本的な解決策を探るのが特長と言えます。

以上の点からもSDGsのベースとなる“持続可能性”は“遊休資産利活用”との相性が良いと言えます。

■世界のSDGs

世界ではレジリエンスや共生をキーワードとしたSDGs実績が多数あります。それは個人、コミュニティ、組織、ビジネス、社会システムが社会課題に適応しながら持続的な成長を遂げる姿であるとも言えます。発展に伴う歴史的背景や異なるバックグラウンドを持つ地域住民にいかに共通のアイデンティティや愛着を持たせるかという課題に対し“協働・共創”を掲げ地域住民だけではなく企業やNGO、大学や第三セクターなどのステークホルダーが連携を図り、課題解決に繋げていくことです。ここでは、世界のSDGsとしてデンマーク、ヴァイレの事例をご紹介します。

●ヴァイレ/Veile(デンマーク/Denmark)

 

 

 

 

 

 

ヴァイレはヨーロッパ大陸側のドイツと国境を接するユトランド半島南部に位置、北欧諸国で唯一「100のレジリエント・シティーズ/100RC」に選ばれた街です。この「100RC」ですが2013年、アメリカのロックフェラー財団が開始したプロジェクトです。世界中の都市から100都市を選定し、財団の支援の下レジリエンス戦略を策定し、国際的ネットワークを構築するというものです。日本からは京都市と富山市が選定されています。
さて、ヴァイレに話を戻します。2016年、“皆が共に、持続可能な街”をスローガンに戦略が策定されました。特に市民参加、デジタル化、ソーシャルレジリエンス構築の3つを注力分野としています。近年ではIT企業やスタートアップ企業が多く誕生し経済とイノベーションの源泉となっています。スマートシティ関連サービスも多数生まれ、また、2012年にはデンマークで最も難民との社会的結合が進んでいる街として表彰もされています。
そんなヴァイレが抱える課題は大きく5つです。
① 気候変動と洪水リスク(近年、洪水、ゲリラ豪雨が多数発生)
② 都市化(交通量増加による自然環境への影響)
③ インフラへのニーズ増加(デジタルライフを支えるIT、既存インフラの老朽化)
④ 産業構造の変化、グローバルエコノミー(地域雇用への影響)
⑤ 人口動態の変化(社会的結合の弱体化)
そして、課題へのアプローチとして以下4つの戦略を掲げました。
❶ 共創が生まれる都市
❷ 気候変動に柔軟な都市
❸ ソーシャルレジリエント都市
❹ スマートな都市
先ず「共創」ですが、これは、“市民のエンゲージメントと共創”としてヴァイレが最も注力しているものです。具体的にはウェルフェア(福祉)ラボラトリーを立ち上げ、施設に住む障害を持つ市民と各分野のエキスパートのアート祭開催などを実施することで支援を行うなどです。また、2040年竣工予定でヴァイレが抱える課題とそれらの解決法を展示するエキスポの設置、各ステークホルダーとの協働による解決策の実践場(リビングラボ)の開発も進んでいます。
次に「気候変動」です。この、ヴァイレという名称が“フィヨルド”を意味する言葉が由来になっていることや12世紀、ヴァイレ川の支流にある谷間に人が住み着いたということからも、水が常に街のシンボルであり生活の一部であることが分かります。しかしながら、近年の気候変動により街に面するフィヨルドが2050年までに25cm、2100年には69cmも上昇すると試算されました。ヴァイレにとってシンボルである水が災害リスクを生む要因となっているのです。そこで、水害のリスクを最小限に抑えることを目的にフィヨルドに面する水辺の再開発を行い、そこに水位コントロール設備を備える計画が進んでいます。また自転車使用促進にも力を入れています。自転車の使用によって大気中のCO2削減はじめ、市民の健康とウェルビーング向上、ガソリン車が及ぼす社会的コスト削減も図れるため、街の中心部に自転車専用道路を整備するという計画も進んでいます。
最後に「レジリエントでスマートな都市」ですが、これは、言い換えると増加が続く移民と融合しながら街の安心、安全の確保、若い世代と社会とのつながりを強固にし、共有可能なリソースを官民一体となり作ることを目指すことです。
一例を挙げると、庭を持たない市民に畑を貸し出し、環境負荷が少ない有機作物栽培の機会を提供する「育てるヴァイレ」と名付けられた市民農園プログラムや市内の警察、学校、看護師、実業家、カウンセラーが共同で犯罪撲滅や不審者特定のためのプログラムやツールを共同開発するプログラムなど、新旧市民が街へのアイデンティティを持ち社会とのつながりを強固にすることを目的とした様々な取り組みが企画実行されています。
ヴァイレでは共創の実現に向け民間、行政、研究機関、第三セクターなどから異なる専門知識を持つ人々が集い、課題に対応するための新たなアイデアやサービスを思考、開発しています。そこからは、単なるソリューション開発ではなく、地域住民に寄り添い、対話する様子が見えてきます。
リビングラボ形式を用いたデンマークの「官民協働の場」作りはじめ、デンマーク、ヴァイレが進める様々なアプローチは遊休資産利活用にとって大変、参考になるものと言えます。

◆出典元
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784761527839
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html
https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/17goals/

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